バイクのフロントフォークの突き出し量の変更についての記事です。
※当記事はCB250Rについて書いています。
内容はバイク全般に共通するものなので他の車種に対しても応用は可能ですが、問題や効果の程度は車種によって違います。
他の車種に関しては、参考として読んでください。
私が現在乗っているCB250R(2018年式)は、とても軽くて元気の良い楽しいバイクなのですが、乗り始めたときから気になっていた問題がありました…それは…
・フロントブレーキ時の前輪の接地感が弱く、安心してブレーキをかけられない。
・コーススラロームでペースを上げるとステアリングの応答に違和感を感じる。
原因はバイクの基本的な車体姿勢、およびフロントフォークの設定かと思われますが、どちらもスポーツバイクとしては見過ごしづらい問題だと思います。
この度、この問題を解決するよい方法が見つかったので、同じ悩みを抱えているであろう同志諸君のために記事を書くことにしました。
方法:フロントフォークの突き出し量をノーマルの2mmから7mmに変更する。
これだけです。
が、フロントフォークの突き出し量を変えるには、前後のメンテナンススタンドが必要で、各ボルトの締め付けトルクの把握とトルクレンチの使用も必須となります。
自分で出来ない場合はバイク屋さんに依頼しましょう。工賃はそれなりにかかるとは思いますが…
↑ フロントフォークの突き出しとはこの部分です。画像はノーマル(2mm)の状態です。
↓ ノーマルから5mm突き出しを増やした状態(7mm)です。
↑ アウターパイプの銀色の部分がトップブリッジから7mm突き出すようにします。※ノーマルは2mmです。
突き出し量は必ず左右のフォークで同じ数値に合わせましょう。
フロントフォークの突き出し量を増やす事によって、フロントの姿勢が少し下がり、同時にキャスター角が小さくなりトレール量が減ります。
その結果として…
・フロントブレーキ時の前輪の接地感が強くなり、安心してブレーキをかけられるようになった。
・コーススラロームで感じていたステアリングの応答の違和感がなくなり、素直に旋回できるようになった。
加えてリアサスペンションのプリロードを少しかけてやることで更に効果が上がります。
これらの効果は明確で、CB250Rに乗ることがさらに楽しくなりました♪
心置きなくフロントブレーキをギューッと握れます!
しかし、良くなった部分がある一方で、悪くなってしまったところもあります…それは…
・もともと安定感の弱いCB250Rの性格が更に不安定になった…
・ハンドルの位置が低くなることでライダーの上半身の前傾が強くなった。
※前傾姿勢を正すため上半身を起こすと、今度はヒジが伸びてしまいます。
これは予想していたことではありますが、ツーリングや街乗りでは不利な効果です。
横風による煽りやフロント周りの歪みの影響なども出やすくなります。
それほど酷くなるわけではないので、運動性能を優先して安定感と姿勢は諦めてもいいと思いますが、ツーリングや街乗りが主ならしない方がいいかもしれませんね。
今回のフロントフォーク7mm突き出しは「CB250Rに乗る目的はスポーツ走行を楽しむことだ!」という方には是非試していただきたいオススメのセッティングです。
注意:前輪が切れ込みやすい性格のタイヤを履いている場合は、突き出し量を増やす事でステアリングの応答が神経質になります。
そのような場合は突き出し量は増やさない方がいいかもしれません。
※IRCの「RX-03」は、このタイプのタイヤだったので、突き出しを元に戻しました。
【フロントフォークの突き出し量を増やしたときの車体姿勢の変化】
フロントフォークの突き出し量を増やすと、車体姿勢がどのように変化するのかを図解で説明します。
↑ これが標準(ノーマル)の車体姿勢です。
↓ フロントフォークの突き出し量を増やすと、車体姿勢はこのように変化します。
・Fフォークの突き出し量が増え、ステアリングヘッドの位置が下がる。
・Fフォークのキャスター角が小さくなり、トレール量が減る。
・重心位置が下がる。
・前輪の荷重が増え、後輪の荷重が減る。
…結果としてどのような効果が生まれるかというと…
・前輪の復元力が小さくなり、ロールに対するステアリングの応答が素早くなります。
つまり曲がる時に前輪がスパッと向きを変えるようになるということです。
ただし、ステアリングの応答の早さにライダーがついていけないと、ハンドルを腕で抑えることになるのでバイクが重く感じられるようになります。
また、ステアリングの切れ込みも起きやすくなるので注意が必要です。
・前輪の荷重が増えグリップが増すので、フロントブレーキを強くかけやすい、一次旋回で曲がりやすくなる効果が期待できます。
反面、後輪は荷重が減りグリップを失いやすくなるので気を付けましょう。
・理論上はステアリングヘッドと重心の位置が下がるので、バイクの回転モーメントが小さくなります。
その結果、ロール運動(特にS字の切り返し)が早くなる効果がありますが、上記二つの効果に比べて体感はしにくいと思います。
また、ステップと路面の距離が少し近くなるので、コーナリングでバンクさせた時にステップをやや擦りやすくなります。
・ステアリングステムがフロントフォークを固定する位置が下がるので、フロントフォークの剛性が上がります(フォークが短くなったことと同じなので)。
しかしCB250Rの場合は元々のフォークの剛性が高いのでほとんど体感はしないでしょう。
【サスのプリロード変更と何が違うのか?】
上の図解を見ての通りフロントフォークの突き出し量を増やした時の車体姿勢は、フロントフォークのプリロードを抜いた時の姿勢、またはリアショックのプリロードをかけた時の姿勢と似ていますね。
そこで、フロントの突き出し量とプリロードの違いについて説明します。
まず、リアショックのプリロードをかけた場合は、位置が上がるのはリアであってフロント(ステアリングヘッド)が下がるわけではないということです。
前後輪の荷重の変化とフロントのキャスター角およびトレール量の変化は同じ方向になりますが、ステアリングヘッドの位置は静的にも動的にもあまり変わりません。
また、重心の位置はリアのプリロードをかけた場合は上がるのに対して、フロントの突き出し量を増やした場合は下がります。
次にフロントのプリロードを抜いた場合と比べるとどうでしょうか?
これは前後輪の荷重の変化、フロントのキャスター角およびトレール量の変化、重心位置、ステアリングヘッドの静的位置、すべて変化の方向は同じになります。
しかしステアリングヘッドの動的位置だけは違いが生じます。
プリロードを抜いた場合はバイクが静止した状態でのフォークの留まる位置が下がり、結果としてステアリングヘッドの位置も下がります。
結果的にある程度の荷重の変化までは走行中の動的な位置も変わりますが、荷重の変化が大きくなりフォークの動きが伸び切りや底付き付近まで達すると、プリロード量に関わらずステアリングヘッドの位置は同じになるのです。
また、フォークの残ストローク量が少なくなるので、フォークが受け止められる最大荷重が減ります。
対して、フォークの突き出し量を増やした場合は、バイクが静止した状態でのフォークの留まる位置はほぼ同じのまま、ステアリングヘッドの位置を下げる結果になります。
そのため静的なフロント(ステアリングヘッド)の位置も下がるし、フォークが伸び切りや底付き付近まで動いた時の位置も低くなる結果となるわけです。
※つまりハードブレーキ時、全開加速時、定速走行時すべてにおいてフロントのキャスター角が小さくなりトレール量が減ることになる。
また、フォークの残ストローク量は変わらないので、フォークが受け止められる最大荷重も変わりません。
フロントフォークの突き出し量の変更は、プリロードによる変更よりもライディングに与える影響が大きいです。
突き出し量を増やすと、走行中に常にステアリングの応答が鋭く感じられるようになります。
以上、今回はフロントフォークの突き出し量変更による効果を解説しました。
簡潔に言うと、スポーツ走行が主目的なら突き出し量を増やす、街乗りやツーリングが主目的ならノーマルのままが良いと思います。
両方の中間をとって2~3mm突き出すのもありです。
突き出し過ぎると、スポーツ走行でもフロントが不安定になり曲がりにくくなります。
突き出し量を変える場合は、上記の利点と欠点を踏まえた上で行ってください。
特に突き出し量を増やした場合のステアリングの切れ込み現象は、転倒の原因にもなるので気を付けましょう。
注意:今回の記事は2018年式のお話しです。2019年式からサスの設定が変わりましたので、2019年式以降のCB250Rに当てはまるかは確認していません。
また、私の体重は53kgです。
体重によって車体姿勢の変化の具合も変わるので、今回の記事がすべてのライダーに当てはまるとは限りません。
↓ 突き出し量変更の作業手順