ホンダ「CB250R」を10倍たのしむブログ

ホンダのCB250Rを中心に、バイクに乗る事触る事の楽しさをたくさんのライダー諸氏と共有するためのブログです。ライディング、カスタム、整備、検証など私が出来ること知っている事は何でも公開していくつもりです。

バイクの各部ボルトの締め付けトルクを変更して車体の剛性を調整してみる。

剛性=物体が外から力を与えられたときに元の形を維持しようとする抵抗の強さ。

 

例えば、直径1cmの鉄棒と直径2cmの鉄棒に同じ力を与えた場合どちらが変形しにくいだろうか?

答えは当然直径2cmの鉄棒だとわかるだろう、これを剛性が高いという。

そして、曲がる度合いが小さければ力が解放された直後に元の形に戻ろうとする。

 

では、日曜大工で板とネジで二つの棚を作ったとして、一方はネジをしっかり締めて組み立て、もう一方は緩く締めて組み立てる。

重い物を乗せたときにグラグラしにくいのはどちらだろうか?

答えはネジをしっかり締めて組み立てた棚の方だとわかるだろう、これも剛性が高いということである。

 

バイクの車体(フレーム)も基本は金属製のパイプとネジ(ボルト)で組み立てられている構造物である。

そして、走行中のバイクには絶えず様々な方向から力が与えられており、その度にバイクの車体はわずかではあるが、捻じれたり撓んだりしてはまた元に戻るの運動を繰り返しているのである。

 

では、その現象がライディングに一体どんな影響を与えているのだろうか?

あまり知られていない事ではあるが、実は走行中の車体の捻じれ撓みの程度は直接的にバイクの操縦安定性およびライディングのフィーリングに無視できないレベルの影響を与えているのである。

 

走行中の車体の捻じれ撓みの程度はライダーの感覚に影響を与える。

捻じれ撓みの程度が大きければ(低剛性)、車体の感触が柔らかくなり応答が穏やかになるが、行き過ぎるとグニャグニャとしたヨレ感が出て不安を感じるようになる。

逆に捻じれ撓みの程度が小さければ(高剛性)、車体の感触が硬くなり応答が鋭くなるが、行き過ぎると神経質な感触になる。

上記のような感触のことを「剛性感」と言う。

 

車体の剛性はそれぞれのバイクの個性でもあって、例えばスーパースポーツ系のバイクは剛性が高いので、サーキット走行では高い安定感を得られるが街乗りでは車体が必要以上に硬く感じる。

逆にネイキッド系のバイクは剛性が低く街乗りでは馴染みやすいが、サーキットを攻めると限界が低いので車体のヨレや振動が発生してしまう、といった現象につながる。

一般に剛性が低いバイクのフレームをサブフレーム等で補強して剛性を上げるカスタムは行われるが、剛性を下げるカスタムはほとんど行われない。

 

剛性の程度は場合によっては公道においても走行中の車体の異常振動(ウォブル、ウィーブ等)の原因になる。

異常振動が発生した場合は、振動発生源となる部分のボルトの締め付けトルクを変更することで振動の発生を抑制できる場合がある。

 

 

今回は車体の剛性を担う要素である「ボルトの締め付けトルク」を変更することで、バイクの剛性をセッティングする方法を紹介します。

サスペンションのセッティングやタイヤ・ブレーキ系のカスタムに比べれば効果は小さいのでしなくても良いが、フィーリングにこだわるならば試してみるのも良いでしょう。

 

ただし、言うまでもなくボルトの主な役割はバイクの部品同士の締結です。

むやみに緩めたり締めたりすると走行中に部品が外れて重大事故になります。

ボルトの締め付けトルクの変更は、指定トルク±10%に留めるのが基本です。

サービスマニュアルとトルクレンチを持っていない方はやってはいけません。

 

↓ 例:ホンダCB250Rの各ボルトの位置

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※画像はホンダ公式サイトより。

 

【目次】

 

【エンジンマウントボルト】

エンジン本体とフレームを締結しているボルトである。

このボルトの締め付けトルクを変更すると、コーナリングや切り返し時の曲がりやすさが変わる。

 

曲がる時の感触が硬くて神経質に感じる場合は緩めてみるとよい。

逆に感触が柔らかすぎてヨレ感がある場合は締め込んでみるとよい。

 

CB250Rはエンジンマウントボルトの締め付けトルクを大幅に落とすと曲がりやすくなる。(最初は慣れるまで少し怖い。)

締め付けトルク0でミニサーキットで全開走行をしても特に問題はなかったが、何かあったとしても一切責任は持てません。

 

 

【ステアリングステムの割締めボルト】

ステアリングステム(三つ又)とフロントフォークを締結するボルト、ピンチボルトとも呼ばれる。

このボルトの締め付けトルクは、フロントブレーキをかけながらコーナーに進入する時のフロント周りの剛性感に特に影響を与える。

 

このボルトは締め込むことはあっても、緩める方向にセッティングすることは少ないだろう。

緩すぎる場合に感じる恐怖感が強い部分でもある。

フロントブレーキをかけると何だがフロントがグニャグニャする感じで怖い、と感じる場合はこのボルトの締め付けトルクを点検してみよう。

 

 

【フロントのアクスルボルトと割り締めボルト】

フロントフォークとフロントホイールを締結するボルト、ピンチボルトとも呼ばれる。

このボルトの締め付けトルクは、フロントブレーキをかけながらコーナーに進入する時の前輪周りの剛性感に影響を与える。

 

緩めると曲がりやすくなるが、ヨレ感があるなら締め込もう。

 

 

【リアのアクスルボルト】

スイングアームとリアホイールを締結しているボルト。

このボルトの締め付けトルクは、コーナー後半でアクセルを開けて加速する時の後輪周りの剛性感に影響を与える。

 

こちらも緩めると曲がりやすくなるが、ヨレ感があるなら締め込もう。

 

 

【8の字でセッティングの違いを試してみよう】

各ボルトの締め付けトルクを変更すると、どんな変化があるのか?を確かめてみたい場合は8の字がおすすめ。

10~20m程度の8の字でも、メリハリをつけて走ればセッティングの効果は十分わかる。

 

短時間ならば、締め付けトルクを大幅に落としてみてもほとんど問題はない。

エンジンマウントボルト、リアアクスルボルト、フロントアクスルボルトと割り締めボルトあたりを指定トルクの3分の1以下にしてみて走ってみると効果の程がてきめんにわかるだろう。

ただし、ステアリングステムのボルトを全て緩めるのは超危険。

ステアリングステムのボルトを緩めてみる場合は、ボトムブリッジのボルトはしっかり締めたまま、トップブリッジのボルトだけを緩めて走ってみよう。

くれぐれも他人の迷惑にならない安全な場所で行い、公道に戻る際は必ず緩めたボルトを締め直しましょう。

 

 

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