ホンダ「CB250R」を10倍たのしむブログ

ホンダのCB250Rを中心に、バイクに乗る事触る事の楽しさをたくさんのライダー諸氏と共有するためのブログです。ライディング、カスタム、整備、検証など私が出来ること知っている事は何でも公開していくつもりです。

バイク用タイヤの寿命と正しい保管方法

バイクのタイヤは数ある消耗部品の中でも価格が高く、交換のタイミングに悩まされるパーツの代表格ではないでしょうか。

そろそろタイヤの使用期限が迫り交換の時期なのでは…と思いつつ先延ばしにしてしまったために転倒してしまい余計に出費がかさむという苦い経験を持つライダーも少なくないのではないだろうか?

 

f:id:initialT:20201013205919j:plain f:id:initialT:20201013210545j:plain

※画像はブリヂストンの公式サイトより。

 

タイヤはその重要性にも関わらず、走行すればゴムが摩耗し、走行しなくても劣化するという気難しい特性を持っているパーツでもあります。

タイヤは摩耗や劣化が進むほど性能が低下していき、それに比例して滑って転倒するリスクが増えていくものです。

 

今回は、タイヤの摩耗や劣化の原因と、それを遅らせる方法について少し掘り下げて書いてみたいと思います。

 

【目次】

 

 

【タイヤの摩耗や劣化が進むと、具体的にどんな性能が低下するのか?】

以下のタイヤの持つ主な性能の多くが低下します。

 

・グリップ力・・・グリップ力が低下すると滑りやすくなる。

・グリップ感や接地感・・・滑るかもしれないという不安感。

・ハンドリング・・・ステアリングが切れ込んだり振れやすくなったり。

・旋回力・・・コーナリングで向きが変わらず大回りになる。

・スライドコントロール・・・滑った瞬間に即転倒しやすくなる。

・パンク・・・ゴムが薄くなる分、異物が刺さった時に内部まで貫通しやすくなる。

・排水性能・・・水たまりでハイドロプレーニング現象が起きやすくなる。

 

タイヤの摩耗や劣化が進むと、転倒の危険が増す、楽しくなくなる、疲れる、スポーツ走行においてはタイムが落ちる、という結果になります。

何もいいこと無いですね…

 

 

【タイヤの交換時期についての公的な基準はあるの?】

道路運送車両法では、タイヤの交換時期について以下のように定めています。

 

・二輪用タイヤについては溝の深さを0.8mm以上必要とする。

・亀裂、コード層の露出など著しい破損のないものであること。

  

以上の二点は法律による定めなので、守らない場合は法律違反となります。

違反切符を切られる、車検に通らないという不都合のほか、事故に遭った時に過失の割合が大きくなってしまう結果にもなります。

溝の深さについては、溝にあるウェアインジケーター(いわゆるスリップサイン)が残り0.8mmを知らせる仕組みになっていますので、それで判断して構いません。

 

 

次に、日本自動車タイヤ協会では、長期使用のタイヤの整備基準について以下のように定めています。

 

・使用開始後5年が経過したタイヤはタイヤ販売店等での点検を受けること。10年が経過したタイヤは、溝があり破損がなくても新品に交換すること。

 

こちらは法律ではありませんが、守らない場合は事故のリスクが高くなります。

 

では、溝さえあれば5年経過のタイヤでも安全が保障されるのか?

答えはNOです、日本自動車タイヤ協会も保証ではない事を明記しています。

補足事項として、タイヤの使用期限は使用の条件や環境によって変わる旨が記されています。

 

バイクのタイヤについて言えば、ツーリング向きのタイヤで適切な保管がなされており、且つ公道を常識的に走行する範囲であれば、5年経過のタイヤであっても(当然、性能の低下はありますが…)それほど心配する必要はないと思います。

しかし、これが5年経過のハイグリップタイヤで峠を攻めるとなると、そんなのは自殺行為ですよ、という話です。

 

履いているタイヤがハイグリップタイヤだったり、目的がスポーツ走行の場合は、残り溝0.8mmや経過年数5年といった基準は、現実的には何の意味も持たないといってよいでしょう。

 

 

【タイヤは銘柄によって、摩耗や劣化の進行具合が大きく異なる】

タイヤは複数のメーカーから複数の銘柄が製造販売されています。

使用目的別にカテゴリーがあり、おおまかに言うと次のように分けられています。

 

・ツーリングタイヤ   → 街乗り&ツーリング向き。

・スポーツタイヤ    → 街乗り&ツーリングからサーキット走行まで。

・プロダクションレース → サーキット走行からレース参戦まで。

※スポーツタイヤやプロダクションレースタイヤはハイグリップタイヤとも呼ばれる。

 

傾向としてツーリングタイヤは摩耗も劣化も遅く、スポーツタイヤ以上になるほど早くなります。

同じように使用していても、ツーリングタイヤなら溝が無くなるまで15,000km~20,000km持つところが、スポーツタイヤだと10,000km以下になったりします。

また、スポーツ性の強いタイヤになるほど、ゴムの劣化を遅らせる老化防止剤の配合が少なくなるためゴムの劣化が早い傾向があります。

 

以上のことから、同じ5年経過 残り溝半分 という条件でも、ツーリングタイヤよりスポーツタイヤの方が性能低下による転倒リスクが高くなるということです。

 

 

【タイヤの摩耗や劣化は、走り方や整備状態によって大きく異なる】

タイヤが摩耗する主な原因は走行中にタイヤが滑って路面に削られるためです。

例えライダーが感じなくても、タイヤは走行中にわずかに滑りながら路面を転がっています。

そして、タイヤはわずかに滑る事でグリップ力や旋回力がより引き出される仕組みになっています。

タイヤはまさに己の身を削りながらライディングの安全や楽しさに貢献しているわけですね。

ブレーキを強くかける、急加速する、鋭くコーナリングする、大きくスライドさせる、といった行為はタイヤの滑りと削れを著しく進行させます。

例えば慣れた人がサーキットのみを走れば、タイヤのエッジが急速に摩耗していき、どんなタイヤでも1000km持つことはありません。

公道においても、急加速や急ブレーキを繰り返していれば、その分摩耗は早くなります。

 

また、空気圧が不適正だったり、サスペンションやホイールバランスに問題を抱えているとタイヤの偏摩耗促進の原因になってしまいますので、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。

 

 

【タイヤの劣化の原因】

・力学的応力、熱、紫外線による酸化反応。

タイヤは走行により変形することで内部に応力が発生し発熱します。

応力や熱のエネルギーはタイヤのゴム分子を刺激し、反応性の高いラジカルを生成します。

生成されたラジカルが酸素と反応することでゴムが変質劣化します(酸化劣化)。

ラジカル生成と酸化反応は開始されると連鎖的に自動継続されます(自動酸化)。

また、日光中の紫外線はタイヤ表面のゴム分子に吸収されラジカルを生成しますが、タイヤ内部までは届きにくい性質を持ちます。

よく言われるタイヤゴムの硬化はこれらの酸化劣化が原因です。

 

・オゾンによる損傷。

オゾン(O3)は3個の酸素原子からなる酸化力の強い分子で大気中に微量に存在します。

オゾンとタイヤのゴムが反応するとゴム分子の結合が切断され、そこに応力が与えらえることで亀裂が発生します(オゾンクラック)。

オゾンは大気中の酸素が紫外線や高圧電流に晒されることで多く発生し、湿気によってゴムとの反応が促進されます。

サイドウォールに発生する無数の細かいヒビ割れはオゾンクラックです。

 

・油類による膨潤。

タイヤのゴムは油類を吸収する性質を持っています。

ゴムの分子の間に油が入り込むと、ゴムは膨張し弾力を失い脆くなります。

ガソリン、チェーンルブ、有機溶剤がタイヤに付着することが原因になります。

 

・低温による損傷。

適正温度の高いハイグリップタイヤは高温に強い反面、低温によるゴムの弾性低下が著しく、気温が下がり過ぎるとゴムに不可逆的な損傷が発生します。

プロダクションレースタイヤの場合は0℃付近で損傷が発生し、更に低温になるとスポーツタイヤでも発生する可能性があります。

一度低温により損傷したゴムは温めても性能が回復することはありません。

低温による損傷は冬季にハイグリップタイヤを履いたバイクを屋外で保管しておくと起こります、ちなみに車の中は外気温とほぼ同じなのでトランポにバイクを入れっぱなしにしておくのも危険です。

 

 

※タイヤが劣化すると硬化やヒビ割れといった症状が発生しますが、一見して全くヒビ割れもなく感触的に硬くなってもいないのに、実際に走ってみるとグリップ性能が大幅に落ちていることもあります。

外観や触った時の感触だけでタイヤの劣化を判断するのは避けましょう。

 

 

【タイヤの製造日と劣化の関係】

タイヤのサイドウォールには、タイヤの製造年週が記載されています。

f:id:initialT:20201014002824p:plain

↑ サイドウォールには、このような4桁の数字がある。このタイヤは西暦2020年の12週目(3月の始め頃)に製造されたことがわかる。

 

タイヤは新しい物の方が良いわけですが、完全未使用タイヤで適切な保管がされているものであれば3年経過していても品質にほとんど問題はありません。

というのも、タイヤの主成分であるゴムは使用開始後から酸化劣化の連鎖反応が始まるからです。

逆に一度使ってしまうと、その後は保管しているだけでも自動的に酸化劣化が進みます。

 

私はプロダクションレースタイヤのピレリ スーパーコルサSCを2年間、ダンロップ α13SPを3年間、未使用のまま保管した後にサーキットで使用した事がありますが、結果は新品時とほぼ同等の走行が可能でした。

厳密にいうと100%の性能ではなかったかも知れませんが、全開で攻めても何も気にする必要がない程度です。

※保管は大きなビニール袋に入れて、押し入れに入れておきました。

 

劣化の早いプロダクションレースタイヤでも大丈夫なのですから、普通のスポーツタイヤやツーリングタイヤなら全く心配する必要はないでしょう。

ちなみに使用してから1年半以上、屋内で放置したスーパーコルサSCを使った事もありますが、こちらは使い物にならないほど劣化していて走行中にあっさり転倒してしまいました…

 

もちろん、中古のバイクを購入してタイヤの製造日が5年前だった、という場合は交換した方がいいと思います。

実際に使用からも5年経っている可能性が高い上に保管方法も不明だからです。

しかし、お店で新品タイヤを購入したら製造日が3年前だった、という場合は特に気にする必要はないと思います。

 

 

【修理タイヤの使用期限】

走行中に釘や金属片を踏み抜いてタイヤに穴が開いてしまった場合に、パンク修理キットなどで穴を塞ぐ方法があります。

注意が必要なのは、修理で穴を塞げば空気漏れは止まりますが、そのまま正常なタイヤと同じように使い続けてよいわけではないということです。

というのも、外側から詰め物をするタイプの修理は高速で走るとタイヤの撓みと遠心力で抜けて飛んで行ってしまう危険性があります。

一旦タイヤをホイールから外して内側から修理する方法もあり、こちらは抜け落ちる危険性はありませんが、一部でも内部構造が傷ついたタイヤは本来の強度を保っていません。

修理済みタイヤでの高速走行は避けましょう。

 

特にフロントタイヤの破損は転倒リスクが高いので、応急修理後は速やかに交換を行った方がよいでしょう。

リアタイヤであれば傷が小さく無理な走り方をしなければ修理済みタイヤでスリップサインが出るまで持つ事も普通にありますが、安全を優先すれば早めの交換が正解だと思います。

 

道路の左端はゴミが溜まりやすいので異物を踏み抜く可能性も高くなります。

堂々と道路の真ん中を走りましょう。

…とは言っても異物の踏み抜きはほとんど運なのでどうしようもありません、ライダーたるもの例え交換したての新品タイヤで釘を踏み抜いても挫けない強い心を養いましょう!

 

 

【タイヤを長持ちさせる方法】

・街乗りやツーリングが目的なら、ツーリングタイヤを選ぼう。

タイヤを長く使いたいならタイヤ選びから意識しましょう。

ブリヂストン T31、ミシュラン ロード5、などがツーリングタイヤに当たります。

これらのツーリングタイヤは単に長持ちするだけでなく、タイヤ性能が気候に左右されにくい、凸凹した公道でも乗り心地が良いなど、過激な走りに向かないかわりに公道を走る上で必要な性能を数多く備えています。

 

ツーリングもするけど、たまに峠を元気よく走ったりサーキット走行会にも参加したい…という場合は公道性能重視のスポーツタイヤを選びましょう。

ブリヂストン S22、ピレリ ロッソⅢ、などが該当します。

スポーツ性能が高い分、摩耗や劣化はツーリングタイヤより早めです。

溝が十分あったとしても、使用開始から2年経過したスポーツタイヤでサーキット走行…というのはやめた方がいいでしょう。

 

スポーツタイヤ枠として扱われるタイヤでも、ブリヂストン RS11、ピレリ ロッソコルサ2などはよりスポーツ性が高くサーキット性能が重視されています。

月0.5~1回くらいはサーキット走行を楽しみつつ、ツーリングは晴れの日しか行かない、という目的には最適でしょう。

そういった使い方であれば、ゴムが老化する前に摩耗による交換時期がくるはずです。

タイヤメーカーのWEBサイトには、タイヤの特性が使用目的別に紹介されているので見てみましょう。

 

・急加速、急ブレーキ、急旋回、といった急の付く操作を避ける。

普段からこのような運転操作をしていると、タイヤの摩耗は確実に早くなります。

特にタイヤが適温に達していない走り始め直後からこのような操作をすると、転倒のリスクが高くなるだけでなくタイヤのゴムが早めに減っていきます。

急の付く操作を避ける運転は安全のみならず、タイヤをはじめとした消耗品にも優しい結果となります。

 

・理想は屋内保管、屋外であればしっかりしたバイクカバーをかける。

直射日光や雨からタイヤを守るべく、バイクの保管方法にも注意しましょう。

車庫などでの屋内保管が理想ですが、屋外の場合はバイクカバーを掛けることで対策しましょう。

バイクカバーはタイヤ以外の樹脂や金属製のパーツを守るためにも有効です。

バイクカバーの値段もピンキリで高価な製品ほど防水性が長持ちする、通気性が良い、熱に強い、など性能も高くなっています。

なお、オゾンはバイクカバーでは遮断できません、高電圧の電気機器から離れた場所で保管しましょう。

 

・保管時はメンテナンススタンドを使って、空気圧を半分にしておく。

これはツーリングタイヤなら気にしなくてよいと思いますが、スポーツ性の高いハイグリップタイヤの場合はタイヤの同じ部分を長期間接地させておくと、その部分だけが凹んで元に戻らなくなることがあります(フラットスポットという)。

空気圧を高めに入れておくという手もありますが、タイヤを地面から浮かせるためにメンテナンススタンドを使用して保管することをおすすめします。

 

また、タイヤを浮かせるならば空気圧を指定の半分にしておくと、タイヤ内部のコード類の緊張を緩めることができるので、タイヤにとってはより良い状態となります。

 

 

【結論】

タイヤを長持ちさせるために出来ることは以下のことです。

 

・タイヤは目的が許すならツーリングタイヤを選ぶ。

・定期的に空気圧の点検を行う。(理想は月1回以上)

・不必要な急加速、急ブレーキ、急旋回をしない。

・直射日光のあたらない屋内に保管する、高電圧の電気機器の近くも避ける。

・なるべく道路の左端は走らない。

 

以上、タイヤの使用期限と保管方法について書いてみました。

タイヤを正しく保管し適切な時期に交換する事で、ライディングの安全と楽しさを長く維持することができ、ひいては余計な出費も抑えることができるようになります。

みなさんも今一度、愛車のタイヤに意識を向けてみては如何でしょうか?

 

スポンサーリンク