今回の整備はCB250Rのフロントブレーキキャリパーの清掃とブレーキパッドの交換です。
※ブレーキキャリパーの構造は車種に関わらずほぼ共通しているので、本記事の内容は他のバイクにも応用できます。
ただし、CB250Rのフロントブレーキの特徴としてピストンピンが存在しませんのでご注ください。
重要!:ブレーキ関連の整備はまともな工具が揃っていれば、それほど難しい作業ではありません。
しかし、整備に失敗した時の危険度は非常に高いので、バイクの整備自体に慣れていない方は行うべきではありません。
↑ フロントブレーキキャリパーはここにあります。
ライダーがブレーキレバーを握ると油圧でキャリパー内側のピストンが押し出され、パッドがディスクローターを挟み込むことでブレーキがかかります。
ピストンはブレーキダスト等で汚れやすい場所なのですが、汚れたり錆びたりすると作動性が悪くなるのでブレーキのコントロール性も悪くなります。特にサビの場合はあまり酷くなるとフルード漏れの原因にもなってしまいます。
ブレーキの作動性を維持しトラブルを予防するため定期的に清掃を行う必要があります。
また、ブレーキパッドも消耗品なので摩耗が進むと効きが悪くなってきます。
ブレーキパッドが使用限界に達したら、新品のパッドと交換しましょう。
・キャリパーの清掃とパッド交換に必要な道具
・キャリパーピストンツール
・10mmメガネレンチ
・12mmメガネレンチ
・トルクレンチと14mmソケット
・キャリパマウントボルト×2・・(部品番号90123-K94-T00)320円
・シリコーングリス
・ネジロック剤 中強度
・ウェス(キッチンペーパーでも良い)
・水と中性洗剤(食器洗い用で十分)
・タイヤレバー(なければマイナスドライバーでも可)
・新品のブレーキパッド(清掃のみの場合は不要)
↑ 上からペーパーウェス、キャリパーピストンツール、メガネレンチ×2
↑ タイヤレバー、安物で構わないしマイナスドライバーで代用も可能
↑ ワコーズの耐熱シリコーンブレーキグリス(1600円)、グリスも様々な製品があるがワコーズ製は耐熱温度が280℃なのでブレーキには頼もしい。
・ブレーキキャリパー清掃の方法
1、フロントブレーキのキャリパーを外す。
左)10mmレンチでフロントフェンダーについているブレーキラインを固定しているナットを外します。
右)14mmレンチで二本のキャリパーボルトを反時計回りに回して外します。
左)次にキャリパー本体を手で掴んで矢印の方向に引っ張ると取り外せます。
新しいバイクだとスムーズに外せますが、古いバイクだとボルトの固着やディスクローターの段付き摩耗、ピストンシールの劣化などで硬くなり取り外しに苦労します。
右)取り外したキャリパーマウントボルトです。サービスマニュアルに従うとこのボルトは再使用不可なので一度取り外すと新品に交換する必要があります。
ボルトの締め付けトルクが45N・mと大きいので、おそらく塑性域まで締め込む設定だと思われます。
先端の赤っぽい部分はネジロック剤の跡です。
2、ブレーキパッドを取り外す。
矢印の部分がブレーキパッドです、二枚あります。
左)ピストンが出た状態ではパッドを取り出せません。タイヤレバーを使って二枚のパッドの間隔を最大まで広げピストンを押し戻します。
右)強引にこじるとパッドにキズがつくので、固い場合はビニール版などを挟んでパッドを保護しましょう。
※パッドを拡げるための専用工具もありますが高価なので私はタイヤレバーを使用しています。マイナスドライバーでも代用できますがキズがつきやすいので気を付けましょう。
左)両側のピストンを全て押し戻すとキャリパーの真ん中の部分からパッドを取り出せるようになります。
右)取り出したブレーキパッドです。3本の溝が無くなるまで摩耗していたら即交換してください。
バックプレートの左右にある突起にグリスを塗るのも良いと思います。
3、ピストンを洗浄する。
左)ブレーキレバーを握るか、ピストンツールを使ってピストンを引っ張り出します。
※ピストンをあまり引っ張り出し過ぎると、キャリパーからポロっと外れてブレーキフルードがドバーッとこぼれてしまいますので気を付けてください。
右)清掃前のピストンです、左上のピストンに黒い汚れが付着しているのがわかります。
ウェスに水で薄めた中性洗剤を付けてキュッキュッと磨いていきます。ピストンツールでピストンを回転させながら表面の汚れをすべて取り除きましょう。
汚れが取れたら水で軽く洗って水分を拭きあげて、ピストン表面にシリコーングリスを薄く塗布します。
グリスはベタベタに付けるとゴミを巻き込む原因になるので、塗り過ぎたら適度に拭き取ってください。
※ピストンの汚れが酷くてもパーツクリーナー等の溶剤の使用は極力控えてください。溶剤を使うとピストンの奥にあるゴム製のシールを劣化させてしまう危険性があります。
左)ピストンを奥まで押し戻して二枚のパッドをはめていきます(新品のパッドを用意しているならここで交換します)。
正常な状態であればピストンは指で押すだけで押し戻せます。
指の力で戻らない場合は中にあるシールが劣化している可能性があるのでオーバーホールが必要です。
右)新品のパッドは鳴き防止のために面取りとグリスアップを施すという方法がありますが、最近のバイクのブレーキはほとんど鳴かないので必要ありません。
面取りはバリを取る程度なら行ってよいですが、角を落とすとゴミが詰まってローターを傷つける原因になります。
※面取り=ヤスリ掛けでブレーキパッドの角を落とすこと。
※グリスアップ=鳴き防止のためにバックプレートにグリスを薄く塗ること。
4、キャリパー装着
新品のキャリパマウンドボルトに中強度タイプのネジロック剤を塗布してトルクレンチと14mmソケットで締め込みます。(14mmソケットは長めのものが必要)
ボルトの指定締め付けトルクは45N・mです。
ネジロック剤は必ず取り外し可能な中強度タイプを使用してください。
キャリパーを装着したら数回ブレーキレバーを握って作業完了です。
以上、フロントブレーキキャリパーの清掃とパッド交換でした。
私見ですがブレーキの性能をよりよく維持するためには3~4カ月に一度の間隔で清掃するとよいと思います。
先にも書きましたがブレーキの整備ミスは命にかかわりますので、作業は慎重に行うようにしてください。