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バイクのブレーキが突然効かなくなる?!フェードとベーパーロックの違いと対処方法について

さて、皆様はバイク走行中に「あれ?やばい!ブレーキが効かない!」という体験をしてヒヤッとしたことはおありだろうか?

 

今回はバイクのブレーキが突然効かなくなる「フェード現象」と「ペーパーロック現象」についてお話します。

 

フェードもベーパーロックも基本的にはブレーキを頻繁に使いすぎる事によって、ブレーキパッドとキャリパーが過熱することによって発生します。

スポーツ走行では必然的に起こり得る現象ですが、一般公道においても峠のくだりでリアブレーキを多用しすぎたり、激しく攻めるようなライディング(←やめよう!)を行うと発生することがあります。

 

この記事では、フェードやベーパーロックが起こる理由と具体的な症状、そして発生してしまった際の対処方法について詳しく説明します。

 

【目次】

 

 

【ブレーキの仕組み】

以下の簡単にブレーキシステムの仕組みを説明しておきます。

↑ ブレーキシステム全体の略図です。ライダーがブレーキレバーを握るとフルード(図の水色の部分※液体)を介してブレーキパッドがディスクローターを挟み押し付ける事でブレーキがかかります。

この時パッドとディスクの摩擦によって熱が発生し、その摩擦熱がパッドとフルードを非常な高温にすることでフェードやベーパーロックが発生します。

↑ ブレーキパッド単体を横から見た略図。ライダーがブレーキをかけるとパッドはかなりの高温になります。
摩材の溝はブレーキ中に熱で膨張した空気を排出するためにあり、また擦り減って溝がなくなる事で交換時期を知らせる役割があります。

 

ブレーキパッドには主に摩材の形成に樹脂を使用したレジン系と、使用していないシンタード系があり、フェードはレジン系パッドでのみ発生します。

摩材とバックプレートの接合方法もレジン系が接着剤を使用しているのに対し、シンタード系は金属溶着なので、これもレジン系が過度の熱に弱い理由になります。

レジン系はオーガニックやセミメタルと表記されることもあり、シンタード系はメタルや焼結と表記されることもあります。

 

 

 

【フェードやベーパーロックが発生しやすい条件】

どちらもブレーキの過熱が原因であるため、ブレーキの使い過ぎが要因となります。

スポーツ走行ならやむを得ない面がありますが、一般公道で発生するようならまず運転方法を改める必要があるでしょう。

 

一番多いのは坂道を下る際のブレーキの使い過ぎなので、ギアを落としてエンジンブレーキを活用する、スピードを控える等の工夫をしましょう。

走行中にリアブレーキを踏みっぱなしにする癖がある場合も発生するので、ブレーキペダルの位置調整を行って対策してください。

 

その他条件としては、ライダー含む積載重量が大きい、気温が高い、パッドの摩材がすり減って薄くなっている、ブレーキフルードが劣化している等の要因で発生しやすくなります。

フロントブレーキよりリアブレーキの方が走行風が当たりにくいため起こりやすいです。

 

また、ブレーキパッドとディスクローターの摩擦により発生した熱は、パッド→フルードの順で伝わるのでフェードが先に起き、次にベーパーロックが起きることになります。

後述するようにベーパーロックの方が危険度は上です。

 

 

 

フェード現象

フェードはレジン系パッドのみで起こる現象で、ブレーキパッドの摩材に含まれている樹脂製の結合材が高温により揮発し、揮発成分がパッドとローターの間に入り込むことが原因で発生します。

ゴムやプラスチックが熱で溶けて蒸発するのと同じ現象で、不快で強い異臭を発生させます。

 

↑ キャリパーから取り外したパッド単体。ローターとの摩擦で高温になると樹脂成分が揮発しガスが発生することでフェードが起こる。ぷ~んと臭います!

 

フェードが起こると、まずブレーキレバーを握ったときの感触がややふわっと感じられるようになります。ただしこの感触の変化は微妙なので気づかないことが多いでしょう(リアの方はまず気づきません)。

そして制動力も低下します。ブレーキを握り込んでも(踏み込んでも)思ったように減速してくれず肝を冷やすことになります。

まったく効かなくなるわけではなく半減する程度なので、さらに強く握れば減速はしますが、更に過熱すると危険なので発生したらいったん走行を中止する必要があります。

 

ベーパーロックとの感触の違いは、ベーパーロックはレバーやペダル入力に対する反発が無くなるのに対して、フェードの場合は無くならない点です。

ブレーキレバーを握っている(踏んでいる)手応えはあるのにブレーキが効きにくくなったらフェードです。

 

フェードが発生したらすぐに走行を中止してバイクを日陰に停めてブレーキパッドが冷えるのを待ちます。

※ブレーキ周りを素手で触ると火傷するので気を付けてください。

真夏でも10分も経てばフェードは回復しますが、すぐに走り出すと再発のおそれがあるので30分~1時間ほど待つのが無難です。

早く冷ましたいからと水をかけると急激な温度変化でキャリパーやローターが歪むので厳禁です。

 

整備面に関してはパッドの摩材がすり減って薄くなっていると、過熱されやすくなるのでフェードの危険が増します。

キャリパーピストンの動作不良によりパッドとローターが引きずりを起こしている場合も同様に危険です。

 

レジン系パッドはフェードするからフェードしないシンタード系パッドにすればよいのかというと、少なくとも公道においてフェードを起こすような走り方をしていればいずれその先のベーパーロックも起こり得ます。

危険度はベーパーロックの方がずっと高いので、フェードを避けたいからシンタード系パッドにする、は正しくないと思います。

 

フェードしたブレーキパッドは冷ましたあと継続使用してよいのかという問題ですが、通常程度のフェードでしたら特に問題はありません。ただし何度も繰り返しフェードさせることは避けてください(※有名メーカー品での話です、無名の安物の場合は知りません)。

長時間の引き摺りなどで通常程度を超えたフェードでパッドが超高温にまで達すると、摩材の炭化や摩材とバックプレートの接着剥離、バックプレートの歪み等が発生するおそれがあり、そのようになったパッドは使用不可能です。

 

また、レジン系パッドには過熱によるフェード以外にも、水に濡れることによるウォーターフェード現象と呼ばれるものもあります。

製品によっては雨の日の出発直後や、走行中でも大雨に降られている状況では著しく制動力が低下するので注意が必要です。

レジン系パッドを購入する際は、なるべく「雨でも性能が落ちにくい、全天候型」などと記載のあるものを選んだほうが良いと思います。

 

 

 

【ベーパーロック現象】

ベーパーロック現象はブレーキキャリパー内に満たされているブレーキフルード(液体)が過熱により沸騰することが原因となります。

フルードが沸騰するとブレーキ経路内に気泡が発生し、気泡がブレーキ圧力を体積変化で吸収してしまうことでブレーキが効かなくなります。

こちらは原因がフルードにあるのでレジン系、シンタード系パッドのどちらでも発生します。

↑ ブレーキキャリパー内に満たされているフルードが加熱により二百数十度以上に達すると沸騰しベーパーロックが起こる。フルードが吸湿劣化すると二百度以下でも起こるようになる。あっつあつやで~!

 

ベーパーロックが起こると、まずブレーキレバーを握ったときのレバーの反力が弱くなりいつもよりレバーが深く入るようになります(リアのペダルも同様です)。

同時に制動力も低下していき、それでもブレーキをかけ続けるとレバーの反力が完全になくなりスカッと空振りしたようにレバーが深く引き込まれます。

こうなると制動力はほぼ0で全くブレーキが効かなくなります。

 

レバー反力低下の初期症状から完全ロックまではそれほど猶予がないので、スポーツ走行等で激しいブレーキを行うライダーは右手の感触に気を配る必要があります。

初期症状を見逃して走り続けると唐突にブレーキレバーがスカッと入り空走してしまうので大変危険です。

 

ベーパーロックが発生したら、フェードと同じくすぐに走行を中止してバイクを日陰に停めましょう。

フェードがパッド表面で発生するのに対して、ベーパーロックはキャリパー内部で発生するので回復には多少長めの時間がかかりますが、それでも30分~1時間ほど休ませれば大丈夫でしょう。

もちろん、水をかけるは厳禁です。

 

ブレーキフルードはベーパーロックによって劣化が進みますが、どの程度劣化するかはベーパーロック時の熱量や発生回数にもよります。

通常、即使用不能とはならないので、ベーパーロック後に冷ませば走行を再開して大丈夫です。

 

整備面ではブレーキフルードの吸湿による劣化(沸点の低下)が要因となるので、劣化したフルードは速やかに交換しましょう。

また、熱はブレーキパッド→キャリパー→フルードと伝わるので、パッドがすり減っていることも要因となります。

 

因みにブレーキフルードには規格があり、バイク用としてはDOT4、DOT5、DOT5.1の3種類があり、多くのバイクの純正フルードにはDOT4が使用されています。

DOT4よりDOT5.1の方が沸点が高くベーパーロックが起こりにくいですが、DOT5.1の方が吸湿劣化が早いので交換サイクルは早くなります。

DOT5はシリコン系フルードでバイクであればハーレー用なので、ハーレー以外のバイクに使うとブレーキ内部が腐食するので使ってはいけません。

スポーツ走行が目的であればDOT5.1を使用することをおすすめします。

同じDOT5.1規格のフルードでも製品によって性能に違いがあるので、いろいろ試してみるのもいいと思います。

 

 

 

以上、如何でしたでしょうか?

フェードにしてもベーパーロックにしても、基本ブレーキの使い過ぎにさえ気を付けていれば起こることはないので、さほど神経質になる必要はないと思います。

公道においては坂道の下るときにだけ気を付けていれば特に問題はないはずです。

スポーツ走行の場合は、パッドやフルードをスポーツ向きのものに交換して、整備をきちんと行い、過度な連続走行を控えるように気を付けることが必要です。

 

今回の記事を書いたのは残暑も厳しい9月半ばですが、怖い思いをするのは怪談だけにしておきましょう。

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